様々なメディアで「2018年問題」と騒がれ、大学を取り巻く環境が大いに揺れ動く中、次年度の第43回大会の開催を、東京工芸大学芸術学部でお引き受けすることになりました。1979年9月の第5回大会、2004年6月の第30回大会に引き続き、東京工芸大学での開催は、3度を数えます。

 本東京工芸大学は、小西本店(現在のコニカミノルタ株式会社)の創始者である6代目杉浦六衛門の遺志を受け継ぎ、1923年に創立された「小西写真専門学校」を前身とします。開学の秋には、帝都を襲った大地震によって、発足間もない本学も少なくない被害を受けたようで、苦難のスタートでした。敗戦後の1950年、新学制の導入に伴って、東京写真短期大学へと組織替えされ、1977年には厚木の東京工芸大学及び中野の東京工芸大学短期大学部へと改称されました。大会テーマに「映像と工学」を掲げた第5回大会は、まだこの短期大学部時代の開催で、写真の工学と表現を出発点とする本学の出自にも深く関わるものだったようです。1994年には、この短期大学部を母胎にしながら、写真、映像、デザインの3学科を要する4年制の芸術学部を開設しました。この芸術学部開設から10周年の節目となる2004年に、「映像表現とナショナル・アイデンティティ」を掲げた第30回大会を、故中村光一実行委員長の指揮下、開催しました。国民国家の形成と映像文化の関係に焦点を当てた大会テーマにあわせ、佐藤純彌監督を基調講演のゲスト・スピーカーとしてお招きしたのも、昨

日のことのようです。

 その後、本芸術学部は既存の3学科に、インタレクティヴ・メディア、アニメーション、ゲーム、マンガの4学科を加え、7学科を要する総合芸術学部へと発展しました。2011年の東日本大震災を経て、2014年には、中野キャンパスの建て替えを完成させました。第44回大会はこの新しい施設で会員の皆様をお迎えいたします。大会テーマは、第30回の「映像表現とナショナル・アイデンティティ」を踏まえなが、グローバル社会、ボーダーレス社会の現実にも注目し、「越境する映像」といたしました。シンポジウムでは、本年4月に逝去された日本映像学会元会長の松本俊夫先生の業績を振り返り、松本先生に縁のあるパネラーをお招きする予定です。記録映画、劇映画、実験映像といった映像の制作、『映像の発見』(1963)から『逸脱の映像』(2013)に至る映像の評論、九州芸術工科大学、京都造形芸術大学、日本大学における映像の教育など、正に「越境する映像」を体現するような活動について、理解を深める機会となれば、望外の喜びです。

 

第44回大会実行員委員会 委員長   李容旭(東京工芸大学芸術学部)

 

委員  大津はつね(東京工芸大学芸術学部)

委員   高山隆一(東京工芸大学芸術学部)

委員    丁智恵(東京工芸大学芸術学部)

委員   名手久貴(東京工芸大学芸術学部)

委員   西村安弘(東京工芸大学芸術学部)

委員   百束朋浩(東京工芸大学芸術学部)

委員   山川直人(東京工芸大学芸術学部)

実行委員会事務局             

〒164-8678 東京都中野区本町2-9-5

  東京工芸大学芸術学部映像学科内